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更新日: 2026年9月24日
小説『ラブカは静かに弓を持つ』感想|潜入調査で取り戻すチェロへの思い
安壇美緒著『ラブカは静かに弓を持つ』の感想。音楽教室への潜入調査、週一回のチェロレッスン、過去の傷を抱えながら本気で挑戦する人々を振り返ります。
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こんにちは、Dancing Shigekoです!
仕事として始めたチェロが、止まっていた時間を再び動かす。
今回は小説『ラブカは静かに弓を持つ』を紹介します!
※この記事では物語の内容に触れています。
基本情報
- 著者:安壇美緒
- 出版社:集英社
- 出版年:2022年
- ページ数:300ページ
登場人物
橘樹
作中の音楽著作権管理団体・全日本音楽著作権連盟に勤める。音楽教室の潜入調査を命じられる。
浅葉桜太郎
ミカサ音楽教室二子玉川店のチェロ講師。橘へチェロを教える。
三船綾香
全日本音楽著作権連盟の総務部に勤務している。
作品の内容
全日本音楽著作権連盟は、ミカサ音楽教室が使用料を払わずに楽曲を利用していると考え、訴訟の準備を進めていた。証拠をつかむため、職員の橘は受講生として音楽教室へ潜入し、レッスンでポップスが使われているか調べるよう命じられる。
二子玉川教室のチェロコースへ入会した橘は、講師・浅葉の演奏に引き込まれる。調査のために始めたレッスンだったが、橘は次第に自主練習へ取り組み、過去に遠ざけたチェロと向き合い始めるのだった。
・音楽を守るための潜入調査
音楽が使われれば、作曲家や権利者へ対価が届く仕組みが必要になる。本作では、その著作権を守る団体と音楽教室の対立が、物語の出発点になっている。
ただ、使用の証拠を得るため、職員を受講生として潜入させる方法にはずるさも感じた。最初から教室へ確認したり、関係者へ聞き取ったりする方法では足りないのか。権利を守る目的が正しくても、そのために人をだますことをどこまで認めるのかという疑問が残る。
橘も、教室の人々と接するうちに、仕事として求められる行動と、自分が感じることの間で揺れていく。調査対象を遠くから見るだけではなく、その中へ入ったからこそ簡単には割り切れなくなるのだと思う。
・週一回チェロ教室へ通う生活
橘は潜入調査として、週に一度、仕事を終えてから二子玉川の音楽教室へ通う。会社の費用でチェロを習うのだから、仕事というより趣味に近く見える。自分ならこの任務へ志願したくなるかもしれない。
もちろん橘にとっては、ただ楽しい習い事ではない。レッスンの中でどの曲が使われたかを記録し、講師や教室へ正体を隠し続けなければならない。それでも浅葉の演奏や指導に触れ、チェロを弾く時間そのものが橘にとって大切なものへ変わっていく。
毎週決まった時間に教室へ通い、少しずつ音が出るようになる。大人になってから新しい習い事を始める生活もよい。仕事が落ち着いたら、楽器の体験レッスンへ行ってみたいという刺激を受けた。
・本気の挑戦が止まっていた時間を動かす
橘は子どもの頃の出来事が心に残り、長くチェロから離れていた。しかし潜入調査をきっかけに再び楽器を手に取り、自主練習まで始める。忘れたことにしていた思いが、少しずつ戻ってくる。
浅葉も、年齢による最後の機会だと考え、全日本音楽コンクールへの挑戦を決める。後悔を残さないために本気で練習する姿が、橘にも影響を与えていく。誰かが真剣に挑戦する姿を見ると、自分も動きたくなるものなのだと思う。
仕事と調査から始まった関係が、音楽を通じて人を変えていく。過去の傷があっても、もう一度好きだったものへ戻り、自分も何かへ挑戦したいと思わせる作品でした!
それでは、また次回!