こんにちは、Dancing Shigekoです!

静かな当直のはずが、病院全体を巻き込む長い夜へ。

今回は小説『仮面病棟』を紹介します!

※この記事では物語の結末を含む内容に触れています。

基本情報

  • 著者:知念実希人
  • 出版社:実業之日本社
  • 出版年:2014年
  • ページ数:340ページ

登場人物

速水秀悟
調布第一病院に勤務する医師。先輩の代わりに田所病院の当直へ入る。

川崎愛美
ピエロ姿の強盗に連れ去られ、銃で撃たれた女性。

ピエロ
コンビニ強盗を起こし、田所病院へ立てこもる。

田所院長
田所病院の院長。警察への通報を拒み、不審な態度を見せる。

作品の内容

速水は、先輩の代わりに田所病院の当直へ入る。普段なら何事もなく終わるはずの夜、コンビニ強盗をしたピエロ姿の男が、銃で撃った川崎愛美を連れて現れた。

速水は愛美の治療を終え、警察へ通報しようとする。しかし田所院長は、なぜか通報してはいけないと言う。犯人は朝になれば出ていくと告げ、患者と職員を病院内へ閉じ込める。速水たちの長い一日が始まるのだった。

・自分が当直医だったらどう動くか

もし自分が当直医で、突然強盗が負傷者を連れてきたらどうするか。目の前の患者を治療した後、速水のように外部へ連絡する方法を探すのか。それとも犯人を刺激せず、朝まで大人しく待つのか。読みながら何度も考えさせられた。

病院には動けない患者もいる。自分だけが逃げるわけにはいかず、犯人へ抵抗すれば他の人が危険にさらされる可能性もある。医師として患者を守りながら、事件の解決も目指す速水の置かれた状況は難しい。

カルテに残された意味深なメッセージや、普段は起きない患者の騒ぎも重なっていく。何が偶然で、何が誰かの意図によるものなのか。閉ざされた病院の中で判断材料が少ないことが、緊張感を強めていた。

・三者の思惑が病院を密室にする

この事件は、速水とピエロだけの駆け引きではない。警察への通報を拒む田所院長が加わり、三者の目的が食い違うことで状況が複雑になっていく。強盗に占拠された被害者のはずの病院にも、表へ出せない事情があるらしい。

田所院長の隠し事が少しずつ明らかになると、ピエロが偶然この病院へ逃げ込んだだけなのかも疑わしくなる。病院という場所そのものが、事件の舞台に選ばれた理由へつながっていく構成が面白い。

いくつもの出来事が絡みながらも、展開は自然に進んでいるように感じた。だからこそ、終盤まで自分が大きな思い違いをしていることに気づけなかったのだと思う。

・予想外の結末と残る違和感

事件の真相が明らかになる終盤は、まったく予想していない展開だった。それでも振り返ると、そうであっても不思議ではない手がかりが置かれている。驚かされながらも、無理にひっくり返されたとは感じない結末だった。

一方で、最後まで少し違和感も残った。速水は事件へ偶然巻き込まれ、起きていることを観察し、自分の考えを整理していく。最終的な真相も、速水の推測を中心に説明されるため、本当にすべてがそのとおりだったのか、彼の中で作られた物語ではないのかという感覚が残る。

ピエロが病院へ現れた時点では想像できなかった場所へ、読者を自然に連れていく。予想外の結末と、読み終えてから考えたくなる余韻が残る作品でした!

それでは、また次回!