こんにちは、Dancing Shigekoです!

ホテルを訪れる人々の目的が、少しずつ一本につながっていく。

今回は東野圭吾作品、小説『マスカレード・ライフ』を紹介します!

※この記事では物語の結末を含む内容に触れています。

基本情報

  • 著者:東野圭吾
  • 出版社:集英社
  • 出版年:2025年
  • ページ数:383ページ

登場人物

新田浩介
ホテル・コルテシア東京の保安課長。元刑事。

山岸直美
ホテル・コルテシア東京のベテランフロントクラーク。

梓真尋
警視庁捜査一課の警部。ホテルで行われる捜査を指揮する。

作品の内容

出版社が主催する日本推理小説新人賞の候補作に、殺人事件の容疑者が書いた作品が残っていた。受賞すれば容疑者が授賞式へ現れる可能性がある。警察は犯人を確保するため、選考会の会場をホテル・コルテシア東京へ移してもらう。

ホテルの保安課長となった新田と、フロントクラークの山岸は、捜査を指揮する梓警部とともに警戒へ当たる。選考会を前にさまざまな事情を抱えた宿泊客が集まり、ホテルの日常の中で事件につながる動きが始まるのだった。

・宿泊客の点が線になっていく

今回も舞台はホテル・コルテシア東京。選考会の数日前から、新田の父親、事件の被害者遺族、大阪から来た母娘、そして重要参考人など、多くの宿泊客がホテルへやってくる。

最初はそれぞれが別の目的で滞在しているように見える。フロントへ相談へ来たり、ホテル内で何気ない会話を交わしたりする中で、山岸や新田との接点が生まれる。何でもないホテルの日常に見えながら、少しずつ緊張感が積み重なっていく。

読み進めるうちに、一人ひとりの存在が点から線へ変わる。誰が選考会や事件に関係し、誰は単なる宿泊客なのか。その区別がつかないからこそ、途中で読むのを止めにくい展開になっていた。

・新田と山岸を支える信頼関係

物語に安心感を与えているのは、新田と山岸の信頼関係。新田は捜査本部で知った内容を山岸へ共有し、山岸も宿泊客の小さな変化に気づけば新田へ相談する。警察とホテルという立場の違いを越え、必要な情報を渡し合っていた。

捜査本部からホテルにとって難しい要求が出れば、山岸がホテル側の代表として対応する。新田も山岸を最も信頼できるスタッフとして扱い、判断を尊重している。シリーズ初期から積み重ねてきた関係が、今回は完成した形で描かれているように感じた。

そこへ梓警部が加わることで、捜査、警備、接客という三つの視点がそろう。それぞれが自分の立場を守りながら、同じ目的へ動くバランスも読みどころだった。

・選考会の裏で進むもう一つの物語

物語の中心には、容疑者がホテルへ現れた時にどう確保するかという警察の計画がある。その一方で、新田の父親や他の宿泊客をめぐる別の物語が細く流れている。何気ない発言や小さな出来事が、後半の展開へつながる手がかりになっていた。

新人賞の選考会も興味深い。審査員が候補作をどう評価し、意見を交わし、受賞作を決めていくのか。事件捜査だけではなく、小説の選考という別の緊張感も物語へ加わっている。

最後は予想していなかった方向へ進みながら、読み返せば納得できる結末だった。新田と山岸の信頼を軸に、宿泊客全員が物語を作り出す、中身の濃い一冊でした!

それでは、また次回!